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北欧のペット事情 - 第1回
 
スウェーデンのペット事情
       

藤田りか子 (文と写真)

スウェーデンTOP

                 
ノーリードは許されないけれど!
   

これから数回に渡って、私が住むスウェーデンを中心に北欧のペット事情について紹介したい。 スウェーデンは福祉の国として有名だが、動物に関しても、そのケアは世界一級。西洋諸国でもユニークな動物福祉と愛護の考え方を展開している。

ヨーロッパと一概にいっても、とても広く、南欧(ラテン系)、東欧(スラブ系)、中央欧、 そして北欧、イギリスおよびアイルランドと各地域には独特の文化がある。これはペット事情についても同様で、たとえばラテン系に属するフランスは犬に対して概して寛容、ノーリードで犬を散歩していたり、犬同伴ができるレストランがあちこちにあるものだ。

そして北欧には北欧のペット事情がある。
公園以外では犬はほとんどリードをつけられ散歩をしているものだ。また、多くが思うほどに、レストランへの犬を入れる自由はない。その点は日本と同じだが、北欧の場合動物アレルギーを持つ人への配慮がその理由だ。汚いから、ではない。そのため電車の車両でも、犬が乗っていい車両とそうではないものに分けられている。フェリーでも同様だ。犬と乗船できるが、そのためのコーナーが設けられ、水や紙が用意されている。

一旦社会に出ればあれこれと守らなければならないことが多いが、しかしアパート/マンションでペットを飼うことについては、いちいち許可は必要ない。住宅物件を見ても、ペット可、という言葉すら存在しない。犬、猫と暮らすのは市民の当然の権利。これは、北欧に限らず、ほとんどの欧米国に共通して言えることだろう。外国は土足だから、と考えられるかもしれないが、北欧とカナダでは、外と内の区別をつけ、玄関でちゃんと靴を脱ぐ!もっとも、犬、猫の足が泥で汚れていれば、家に入る前によくタオルでふいてあげる。しかし、日本のペット可のマンションのように、犬を洗うための洗い場施設が設けられているところは、まずないだろう。逆に言うと、そこまでかしこまらなくても、ペットとの生活はごく普通にごく自然に行なわれているのだ。もっとも、日本考案の多くのペットに対する工夫はなかなか世界に誇れるものとも思うのだが!              

                 
馬もペット!

馬もペット

さてペットの飼育所帯率だが、スウェーデンでは猫が16.8%。犬は12.9%。比較として日本は猫が10.1%で犬が15.8%。北欧の人口密度は約21人、日本は10倍以上の337人だから、何かと場所を取る犬の飼育率が人口密な日本よりスウェーデンの方が低いのは不思議な感じもする。しかし、動物に対しての興味が薄い国ではけっしてない。それどころか、反対だ。馬の頭数は30万頭以上でヨーロッパでももっとも多い国に数えられており、人口1000人対して40頭の割合だ(犬は80匹、猫は120匹だ)。乗馬クラブで馬を飼っているだけではなく、郊外に馬小屋付きの家で自分の馬をペットとして飼っている人は決してすくなくない。ちなみに青少年の女子にとって一番人気のスポーツは乗馬である(男子ではサッカーだ)。それぐらい、北欧では動物が身近な存在である。馬をとりまき、犬がいたり、猫がいたりする。

                 
ほとんどの犬は室内飼い
        

猫は室内飼い

 
アパートの階段で飼い主の帰りを待つネコ

多くの犬は室内飼いだ。外の犬舎で飼われているのは、そり犬を何頭も持つ人や大掛かりにケネルを運営している人以外は、ほとんどあまり例がない。またくさりでのつなぎ飼いは法律で禁止されている。犬が室内で飼われるのが当たり前なのは、気候のせいもあるだろう。マイナス10度が続く厳しい冬日もある。
しかし猫に関しては、家の中だけで飼われる率は57%で、必ずしも 室内生活が100%というわけではない。残り43%の猫は外と家の中を出たり入ったりする自由なライフスタイルを送っている。このことに関しては私の主観を含めて述べると、都会で飼う人は交通の行き来が激しいので家の中で猫を飼おうとするようだ。しかし、郊外では、人々はできるだけ外に出る可能性を与える。もちろんそれだけに猫の去勢避妊率も高い。その率80%以上だ(日本は内閣府世論調査では72、3%)。              

「やっぱり猫にとって、猫らしい生活をさせてあげなくてはね。ネズミを取ったり、まわりを散策してパトロールしてみたり」 と獣医師ですらコメントする。郊外であれば、アパートの住民だって猫を外にだす。よくアパートのメイン入り口の前で誰かにドアを開けてもらえるまでまっている猫もいるものだ。 スウェーデンにおいては、可能性がある限りは、外猫に対してのネガティブな態度は全くない。それどころか、もし郊外に住みながら猫を家に閉じ込めてかっているとむしろ 「人間のエゴ」と批判されてしまう。


北欧の動物の倫理観というのは、日本とはまた少し異なる。動物を人間のように扱うのが、動物愛護とは考えない。各動物が持つ動物らしいニーズを満たしてあげるのが、動物愛護と考える。 このことについては、次回の記事でもう少しじっくり述べよう。


もっとも冬になり、雪が降ったり氷点下10度にもなると、たいていの猫たちは家から出たがらない。真冬の間だけ家猫にする家庭も多いようだ。

        
責任感の強い国民性にささえられ

犬の飼育率が北欧で少ないのは、一つにはペットへの責任感によると推測される。何と言っても、世界でもシングル所帯率が一番高い国の一つでもある。一人で働いていれば、当然犬を家に残してしまう。家に何時間も独りで置くのはかわいそうである。犬は社会的な動物だ。誰かが必要、と考えるのだ。


犬や猫が愛護法により決してペットショップでは売られてはいけない、という事実もペットに対する責任感を助長しているだろう。北欧4カ国(スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランド)ではいずれも、ブリーダーから子犬を買う。猫の場合は、近所で生まれた猫をもらってくる、猫の保護施設でもらう、あるいは、純血種猫の場合は、ブリーダーからだ。また、大半の犬のブリーダーは各国に存在する犬種の登録団体であるケネルクラブの課す規制に則り運営を行なっている。したがって、スウェーデンに関して言えば、パピーミルの存在はほとんど皆無に近い。これは愛護法が行き届いていることも多いに起因するだろう。

        
ペットとはアクティブに
        

スウェーデンTOP

ウサギのスポーツ、うさぎアジリティ、あるいはラビット・ホッピングは若い女の子の間でとてもポピュラー

日本より低い犬の飼育率と述べたが、しかし、犬とのアクティビティ率はおそらくスウェーデンは世界のトップレベルに属する。そう、飼えば、とことん世話をして、とことんペットとつきあいをする。一日に費やす散歩の平均時間は、ほぼ一時間。だからこそ、アパートに住んでいようが、庭付きの大きな家に住んでいようが、関係ない。大型犬をアパートで飼っている人はたくさんいる。どんな住居形態であれ、いずれにしても犬は外に出さなければだめなのである。外で犬がおしっこをしてはいけない、などと咎める人もいない。よっておしっこシーツなる存在はおそらく、北欧人のほとんどが知らないはずである。


単に散歩するだけではなく、犬との何かのスポーツにいそしむのも北欧人の特徴。たとえばスウェーデン農業大学獣医学部の調べによると、犬の飼い主の30%がオビディエンス・トレーニングを行なう。トラッキング(足跡追求)については18%。トラッキングは、犬の嗅覚を刺激してあげれるスポーツとして、非常に人気だ。愛犬のスポーツとしてレギュラーにトラッキングを行なう人もいるが、犬を飼っていたら、誰もが一度や二度はパピー教室などで経験するものであり、それぐらい一般的だ。


興味深いのは、27%もの犬たちが、狩猟に関するスポーツや実猟のアクティビティに参加していること。狩猟は、スウェーデン、フィンランドと共に、国民的な余暇の過ごし方だ。狩猟は世界のどの国よりも、秩序正しくそして組織的に行なわれているので、狩猟に関する否定的な世論はほとんどない。むしろ、自然とアクティブにつきあう方法として、狩猟というレジャーが位置づけられているほどだ。このことも、北欧の自然観、動物観、そしてそれを背景として生まれた彼らの愛護観を理解する上では大事なことだ。


犬のみならず、うさぎだってアクティブにしてあげる。若い子の間で大人気のうさぎアジリティ(ラビット・ホッピング)というスポーツは、スウェーデンでは非常に盛んだ。室内でウサギを閉じ込めたまま飼うのではなく、うさぎらしい運動能力を活かしてあげよう、というのが基本の考え。そしてこのスポーツはスウェーデンで70年代に考案された。今はヨーロッパでおよそ4000人の愛好家が存在する。